Dulcimer / Trader Horne / Trees / Spriguns / Presence / Jethro Tull



Dulcimer - Dulcimer

ターンド・アズ・ア・ボーイ  英国フォーク界の中でも一二を争う程のアルバムジャケットの美しさを誇るバンドと言えばこのダルシマーのファーストアルバムじゃないだろうか?非常に英国の荘厳さと気質を表現したアートワークはそれだけでも十分に名盤と呼ばれる資格を持ち合わせていたりするのだ。

1971年リリースのファーストアルバム「ターンド・アズ・ア・ボーイ」。この後もう一枚、そして1990年代になって再結成して何枚かアルバムがリリースされているらしいんだけど、やっぱりこのファーストがダントツの出来映えというかインパクト。こないだまでの素朴でソフトなほのぼのとした女性が歌うフォークからは少々逸脱して、もっとフォーキーなロックというような激しさを持った三人組のアルバムなので、アルバムジャケットから思い起こす印象とは多分ちょっと異なる。基本はギターと歌なんだけど、ベースやマンドリン、もちろんダルシマーなどが積極的に絡んでくるところが激しさかな。歌声も静かな語り口調とは全くかけ離れていてかなり個性的な声と熱い魂を吐き出しているような歌というのもあるのでやっぱロックの世界に出てくるだけのことはあるアルバム。

 聴いていて思った…、デヴィッド・ボウイの最初期のアコースティック系の曲の雰囲気に似ているんだ。音とかの処理も12弦を思い切りリバーブ掛けて処理してるから質感が似てるし…と思ってクレジットをアレコレ見ているとプロデュースがラリー・ペイジ…?ん?キンクスのアレか?う〜ん、どことなくレイ・デイヴィス的な歌声でもあるし、キンクス的な面もある、か?あるなぁ(笑)。まぁ、やっぱりそういうのがあるから単なるフォークロックっつう枠には収まりきらないバンドなのは間違いない。

 いやぁ、アナログ盤は見かけたことないです。コピー盤ならあるけどオリジナル盤は知らない。見ても多分結構なお値段するだろうなぁ…、CDになってからもそれほど多く見かけないかもしれない。自分的にはやっぱり待ち遠しかったのでCDになってないかしょっちゅう確認していたアルバムのひとつで、発見した時は嬉しかったなぁ。音聴いて、ちょっと「??」って思ったけど(笑)。まぁ、いいじゃないか。

Hedgehog Pie - Hedgehog Pie

 トラッドフォークの世界とロックフィールドのトラッドフォークとは割と近似しているけどなんとなく線引きがあるように自分の中で分けている気がする…。フェアポートやスティーライってのはもちろんロックフィールドのトラッドバンドなんだけど、やっぱ純然たるフォークギターが中心になっているとトラッドフォークの源流に近いルーツバンドなんだろう、っていう感覚。ロックは進化すべきものだから純然たるトラッドに敬意を払いながらもエレクトリックのロックフィールドを持ち込むっていうのは正しい選択だし、実際に面白いから好きです。もちろんルーツも大事なのでそういうのこそトラッドフォーク、なんだろう。

 さて、もう二十年くらい探しまくっていて今でも手に入れていない幻のアイテム…CDもリリースされていないと思うんだけど、そんなのがまだまだあります。その中でも最高峰に位置しているヘッジホッグ・パイというバンド。そのセカンドアルバム「Green Lady」ってのが欲しいんだけど見たことない。ヤフオクで出てるのを今検索したら出てきたけど、そうでもなかったら見ることないもんなぁ。ヤフオクキライだからやんないし(笑)。おかげで未だ見ぬ幻の名盤、だろう、というか名盤であってほしい(笑)作品は今回置いておいてだ…、ファーストアルバムの「Hedgehog Pie」はこないだ発見したのでようやく聴けたんです。ちょっと前にCD出てたらしいけど、毎日チェックしてないし…。そんでバンド名だけで驚いて狂喜してクリックしたらファーストの「Hedgehog Pie」だった…。あぁ…「Green Lady」聴きたいねぇ〜。そういう楽しみもないとアカンでしょ♪  んで、そのファーストアルバム「Hedgehog Pie」なんだが…、無茶苦茶良いぞ!!

 フォーク路線が強い感じなんだが、男女ボーカルがバランス良く入っていてさ、しかもアプローチがロックだからフォークだけでなくってフォークをベースにベースもエレキギターもフルートもピアノやフィドルもそこかしこで入ってくる。ただ、ドラムはほとんど入ってこないからそういう意味ではヘヴィロックにはならないんだが、面白い。これはセカンドの「Green Lady」がもの凄く期待できるバンド。シーンに登場したのは1974年なのでちょっと遅咲きなんだけど、良いじゃないですか。かなりケルティックナ旋律が入ってくるのでもしかしたらアイルランド出身者でも在籍しているのだろうか。若干知られた所ではDando Shaftのバイオリン奏者が参加しているらしいが…、ニッチな世界だ(笑)。

 この手のバンドってのはフォークにフルートやフィドルってのが鉄則でして…、いや、良い雰囲気出すんですよ。そんでもってこういう音でフォークギターが録音出来るってのも凄いんだよ。フォークの録音って難しいんだからさ…残響音とかソフトに残さないとカチカチの音に鳴っちゃうからこういう風には鳴らないし。思い入れのあるバンドだけど音自体の接触度はまだまだ低いのでこの季節にこれからヘヴィに流しておきたいねぇ〜。そんでヘッジホッグ・パイに運を付けてもらってセカンドアルバム「Green Lady」も発掘できることを期待!

 残念ながら日本のアマゾンではこのファーストアルバム「Hedgehog Pie」も手に入らない状態なのでアメリカのアマゾンへどうぞ。日本で手に入るのはなぜかUK盤のライブアルバムだけらしい。これも知らないなぁ…気が向いたら聴いてみよう〜っと。

Hedgehog Pie - The Green Lady

 1990年頃にマーキー社から発売された「ブリティッシュ・ロック集成」というマニアックな本があってですね、当時から結構これって重宝してそれまでも英国ロックを独自で漁っていたりしたんだけど、知らないのも多くってさ、それで結構欲深くなったんですよ(笑)。特に英国フォーク系ってのはまだまだ未着手の領域だったので、この本で結構目安になったし幅が広がった。その後その手の本もいくつか出てきたんだけど、何冊かは持ってて参考にしたりしてた。ただ、こういう本になっているのを読むととにかくすごいアルバムにしか見えなくてとにかく探しても手に入らないから余計に神々しくなってしまって見つけて買った時にはもうそれだけで満足という状況でして…うん、だから音を聴いて悪いハズがない、っていう先入観なんです。どこかにいいトコロがあって、気づかない自分が悪いんだ、みたいな(笑)。

 だから今でもわからないのがいっぱいあるんだよな…。多分、好みじゃないんだろうしそんなに傑作じゃないし、ただ珍しいだけというアルバムが多いんだと思う。だから故に少しでも良いところをここぞとばかりにクローズアップして本には書かれているので、余計に気になるという循環なのだな。 1975年にリリースされたHedgehog Pieの「The Green Lady」と言うアルバムなのだが、かれこれ20年くらい探しまくってて、アナログ時代には一度くらいは見かけたことあるしネット時代になってからはオークションやらなんやらで見かけることは結構出てきたんだけどね、やっぱりとんでもなく高いんですよ。なので見送りしてたりして結局聴けなかった。面白いことにCDになったことがないアルバムでさ、これぞ幻のバンドっつうくらいのまでCDになっているこの時代に全くその気配なし。いや、あったかもしれないけどなんでだろ?権利問題なんだろうな。カウンターフィット盤でも出たことないし…、そこまでのものでもないってことだろうが。

 そんなことなんだけどちょいと前にネットで入手しまして…、うん、20年間聴いてみたかったアルバムを初めて耳にすることが出来ました。YouTubeのアップロード音源を聴かずしてアルバム単位で聴きました。いや、感動だよね、こうして音が聴けるってのはさ。残念ながらレコードそのものはまだ入手していなくて単に音だけをもらったんだけど…、それでもまずは良い。まずその感動が嬉しかった。持ってる人は持ってるんだな、って。

 さて、じっくりと聴きましたよ、こいつは。それこそ久々に何回もリピートして聴いててさ、いや〜、ファーストアルバム「Hedgehog Pie」の方が先に聴けたし、その印象が素晴らしかったのですごく期待してたもん。男女ボーカルでややプログレッシブな方向性もありつつも基本は素朴なエレクトリックトラッドベースのロックバンド。メロトロンとかフルートとか出てくるし、曲展開が確かに凝ってるのもあって名盤と言われるらしいんだな。音を聴いて、なるほど、確かにタイトル曲「The Green Lady」は様々な要素を詰め込んだ当にプログレッシブなフォークロックという展開で面白い。女性の歌声ってのもあどけなくて良い感じだし、見事。アルバムを聴き始めた最初の方は男の歌声中心だったので「ん?」ってのがあったけど、徐々に味が出てくるアルバムの進み方かも。

 いや、躍動感も湿っぽさもドラマティックな展開も音色も可愛さもレア度も探す価値も見事にある大変美しいアイテム。ぜひこれからもまだ探し続けなければいけないアルバムだ…。CD紙ジャケで出してくれないかねぇ…。

Trader Horne - Morning Way

Morning Way  英国三種の神器と歌われるメロウキャンドルチューダーロッジスパイロジャイラとは同レベルで語られることはなく、どちらかと言えばキング・クリムゾンやフェアポート・コンベンションと並んで語られることの多いトレイダー・ホーンサンディ・デニーフェアポート・コンベンションに加入する前までフェアポートで歌を歌っていたのがジュディ・ダイブルで、今でもジュディ期の音源はいくつも残されていて、特にフェアポートのファーストアルバムでは若々しくも落ち着いた歌を聴かせてくれる。

 で、その後彼女が選んだバンドがゼムに参加していたジャッキー・マッコーレー(カタカナで書くとマヌケだが)と共に結成したトレイダー・ホーンなのだ。そしてクリムゾンと並べて語られるのは1969年当時、イアン・マクドナルドの恋人だった関係からクリムゾンの「風に語りて(I Talk To Wind)」のオリジナルデモバージョンのボーカルを務めていたワケだ。今、これ聴けるのかな?昔はクリムゾンの二枚組ベスト盤「新世代の啓示」で聴けたんだけど、確かボックスとかにもあったかな?覚えてないけど(笑)何かで聴けるんだろう、きっと。

 そんなことで歌には定評のあるジュディ・ダイブルの歌声がたっぷり…とは聴けないのがイマイチこのバンドにハマりこめないトコロなんだけど、半分くらいしか歌ってないんだよね。だけど英国フォークとしては適度にオトコと女の歌声がある方が味があるってことは確かなので、まあいいのかな、とも思う。純粋にフォークアルバムとして聴くべきサウンドで、ほのぼのと、とにかくロック的な激しさなんてのは全くなくって、何となく寒いなぁって言う哀愁漂う印象で、それでいてどこか温かく感じる面もあるのは音色が自然だからだろうね。

 結構ほっとするアルバムなのでこの辺から英国フォークにハマる人はハマるんかな。そう、クリムゾンの「風に語りて」の延長がひたすら続くというイメージが近いかも知れないね。そんなアルバムタイトルは「モーニング・ウェイ」で1969年にリリースされた本作だけで消えていったバンド。

Trees - On The Shore

オン・ザ・ショア(紙ジャケット仕様)  あまりにもそのジャケットだけが有名になってしまったTreesのセカンドアルバム「オン・ザ・ショア」。ご存じのようにヒプノシスの手によるアートワークで、オリジナル盤でならば味わえるのだろう微妙なニュアンスの色合いというものが非常に重要な気がするのだが、なかなかオリジナル盤に出会えることもなく、また決して入手する出来る金額でもなく、高嶺の花なのだが、最近デラックスエディションな2枚組CDがリリースされたようなので、それならばかなりオリジナルに近い色合いが再現されているのではないだろうかと思う。

 1970年リリースのセカンドアルバム「オン・ザ・ショア」。ここの所の一連のフォークとは少々異なり、これは完全にロックです。まぁ、フォークロックっつうか微妙な線はあるんだけど、これはロックだろうな、と位置付けていいと思うし、しっかりとバンド形態で演奏されているし、微妙なエレキギター…リチャード・トンプソンのような感じで頑張ってるんだけどさ、そういうのも含めてロックだよ。紅一点のセリア姫の歌声があまりにもトラッドフォーク的な歌声と歌い方なのでフォーク的要素ももちろん強くなるんだけど、フェアポートに成り切れなかった、でも頑張っていたらこうなりました、みたいな感じのバンドで、結構ツボを押さえていると思う。トラッド曲だけでなくってしっかりとオリジナル曲も違和感なく作られているし、長いアレンジを施している曲にしても飽きさせないようになってるしね。だからジャケットのインパクトに釣られて買った人でもそれなりに楽しめて質の高い音楽に触れられるレベルだから大丈夫でしょ。

 あぁ、英国らしいアルバムだなぁ…。ジャケットの雰囲気はもちろんだけど音もさ、モノマネから自身の音色を確立していくという感じでね、しかもそれが紛れもなく英国的な陰鬱度と共にしっとりと浸食しているんだもん。この辺はまだまだ浅く広い世界だけど、それでもこれだけ心地良く楽しめるんだからやっぱりこの深みは楽しい。そしてこのアルバムも全てが素晴らしい曲じゃないけど、良い曲がいくつかあって、例えば「Streets of Deny」とか「Sally Free And Easy」なんてのは多分ここのサイトに来ているロックファンは好きだと思うんだよね。良いんだよ、うん。

 ボーナストラック付き2枚組CD欲しくなってきたな(笑)。BBC音源とデモ音源が付いているみたいだけど、BBCは既にあるしなぁ…、全く商売上手なメジャーな配給会社は困り者だね(笑)。その分そこから入ってくる人には完璧に揃ったアイテムになるから嬉しいことなんだろうけど。難しいなぁ。

Spriguns - Time Will Pass

Time Will Pass  数々の英国フォークからフォークロックバンドあたりを彷徨っているとフェアポート・コンヴェンションというバンドの影響力の大きさには実に驚かされることが多い。それはもちろんサンディ・デニーの歌唱力表現力だったりリチャード・トンプソンのギタースタイルだったりデイヴ・スウォーブリックだったり、またはアシュレー・ハッチングスだったり色々なんだけど、音的な影響にしても見事にエレクトリックなロックとトラッドというものを結びつけた第一人者としての役割を果たしていて、代々までその影響力が残っている。凄いよなぁ…。

 そんなフェアポート・コンヴェンションを代表するサンディ・デニーに憧れて歌い始めたマンディ・モートン姫の率いるスプリガンスが1977年に放った二枚目のアルバム「Time Will Pass」を…。実はこの後の有名な三枚目の「Magic Lady」という作品、今だに入手してないことを思い出して(笑)、聴きたい聴きたいと思いつつすっかり抜け落ちてましたねぇ。それこそサンディに捧げるアルバムとして、またスプリガンスの最高傑作との呼び名も高いので聴かなければいかんですな。はい。

 で、話は戻ってセカンドアルバム「Time Will Pass」なんだが、もちろんマンディ・モートン姫の歌声がバンドを制しているんだけど、トラッドフォーク類のバンドとはもちろん大きく異なったこれも明らかにフォーク色の強いロックバンド。しかも結構ポップでカラフルというのが面白くて、この辺は時代が1977年というのもあるのか、良くできてる。ただ時代はパンクからディスコへ行こうとしている時なのでもちろんセールス的には全く見捨てられたものであることは想像に難くない…。そしてこの「Time Will Pass」というアルバム、なんつうか、ギターの音色が割とサイケな雰囲気で、そして結構ドラマティックな展開があったり、しっとりと聴かせたりしていてポップス顔負けのアレンジが施されているので聴きやすい。まぁ、どこかプログレッシヴ的展開も見せるんだけど、時代的にそこまでは難しいワケで、ドロドロさではなくサラリとまとめられている。結構かっこよいロックなので嬉しいね。カーヴド・エアーほどのインパクトはないけど、その辺のよりはよっぽど良いよ、これ。

 ああ、やっぱサードアルバム「Magic Lady」聴きたくなってきたな。黒魔術的なイメージを持たせているけど、その実きっとこんな感じに聴きやすい部分とハデに展開する部分とかが色々とあるんだろうな。マンディ・モートンがサンディ・デニーに捧げる怨念が集約されていると思うと楽しみ。昔はこれ聴いてもあんまりピンと来なかったけど今聴くと、こりゃ面白い、って思った。

Spriguns - Revel Weird & Wild

奇妙な酒宴(紙)  英国の美しき調べに乗って聴ける音楽に浸っているとこの暑さもどうでも良くなってくる…、そりゃまぁ、エアコンの中で聴くから涼しいってことで云える話でして、外で聴くならもちろん異なる音になることは必至でしょう(笑)。そんなことで今度は少々毛色の異なる歌声と英国の調べってことで…、スプリガンスってバンドです。そう、マンディ・モートンさんが歌ってるバンドでして、基本的にトラッドフォーク路線なんだよね。ただ、ちょっとプログレ的展開があったり複合技が出てくるのと、やはり女性ボーカルってことでプログレファンから狙われるバンドとなってしまったってトコですか。

 バンド名をスプリガンス・オブ・トルガスからスプリガンスに短縮してからの一枚目となる「奇妙な酒宴」ですね。1975年リリースなので英国ロック的には少々遅めのシーン登場なんだけど、トラッドを背景に多様な音を重ね合わせてしっとりと聞かせる歌が多いバンドで、やはりマンディ・モートンの芯の通った歌声に信念が聞かれる。このファーストアルバム「奇妙な酒宴」ではそんなにプログレ色もしないけど…、まぁ、確かにバイオリンや何やらと多種多様の楽器が聞こえてくるのと、普通のトラッド一辺倒のバンドの音ではないのも事実。まだ未熟感は漂う作品ではあるけど、聞き込みたくなる面白さはたっぷりと落ち合わせた自然なアルバム。

 ジャケットがね、やっぱりトラッドらしくないんだよね。どこか黒魔術的な側面を持っているように感じるバンドだから…、ってのはやっぱり1978年に発表した「Magic Lady」という名盤の印象が強いからだろうか。後追いだとどうしてもそういう印象って持ったままなんだよなぁ。マンディ・モートンはサンディ・デニーの大ファンで、彼女に成り切りたくて歌を始めたようなものらしい。うん、なるほどねぇ…という歌い方なのは聴いた人は納得できるでしょう。しかし聞けば聴くほどに幅広い音楽に取り組んでいるバンドだということがわかってくる涼しげなサウンドです。

Mandy Morton & Spriguns - Magic Lady

Magic Lady 春から夏にかけての季節の中で聴く音楽ってのは人それぞれ色々と感じ方が違うので好みは出るんだろうけど、自分的には結構英国トラッド系を聴くにはちょうど良い季節なんじゃないか、なんて勝手に思ってる部分があってですね…、そもそも英国トラッドって暗い歌詞…、悲惨な家族の結末とか殺人とか恨みとかそういうのを歌っているのなんだけど、オリジナリティを出してきたロック系のトラッドについてはそうでもないので、ご安心を(笑)。いや、そんなのよりもね、音の暗さはともかくどことなく田園風景を思い起こさせるところからこの季節に…っていう思いなのかもね。まぁ、単純にギラギラと熱いハードなものじゃなくてもスカとかレゲエみたいに涼しいのでなくても、というようなところか。

 サンディ・デニーを敬愛していたシンガーは今に至るまで数多くいるんだが、中でも一際目立っていたのがSprigunsというバンドで知られているマンディ・モートン嬢でしょう。Sprigunsそのものも結構なカルトバンドという位置づけになっているのであまり知られてはいないんだろうけど、別に変な音を出していたワケでもないし、聴いてみるとやっぱり楽しめるものです。が、確かに受けないだろうし売れないだろうなぁというのはわかる音なので一生に何百回も聴くかという音ではないかもしれないな。 そんなSprigunsが1978年にリリースした最後の作品…と言うのか名義はMandy Morton & Sprigunsになっている名盤「Magic Lady」。Sandy Dennyが転落死したのを知って悲しんだマンディ・モートン嬢は製作中だったこのアルバムを急遽サンディ・デニーに捧げる作品としてリリース。その思いが現在に至るまでしっかりと伝え切れているところが見事。人の想いってのはこうして伝わっていくのかもしれんな。…と、そんな作品「Magic Lady」なんだけど、こうして紹介しているジャケット写真やSprigunsなんていうバンド名だけで見ているとちょっと不気味感あるよね?うん、自分もそうだけどジャケットが黒魔術の六芒星なワケだからそりゃちょっと引くもん。なんか意味あるのかもしれないけど、そんなに深みはないような気がする。少なくともメッセージとして打ち出しているようなものではないと思うんだけど、どうなんだろ?Sandy Dennyに捧ぐと言う意味でなのか?う〜ん、未熟な自分(笑)。

 さて、音の方はどうかと言うと…、よく言われるのがSpriguns of Tolgusというグループ名で出てきた時は純粋に英国トラッドをベースとしたバンドだったけど、Sprigunsになってからは割とプログレッシブな傾向が出てきていた、というもので、本作「Magic Lady」についてはSprigunsの二作を経た後のアルバムなのでどうなっているのか気になるところだったようだが、実際は過去の中で一番ポップなんじゃない?どの曲もコンパクトに纏められていてそれほど民族色も強くないし、暗くもないし、しっとりと湿ったギターの音があったりフィドルがあったりするけど、あとダルシマー…なのかな?よくわからんけど雰囲気はもちろん世界観を醸し出しているね。ハッとするコーラスワークや驚きもあるけど、基本的に歌いやすいポップ指向を持った作品。だからジャケットとこれまでの活動歴とが一気に成熟したような名盤。違和感はない作品だろうし、躍動感すら溢れている見事なアルバム。

 もちろんアナログ時代には見つからなかったし、英国でもレアなアイテムでものすごい値段が付いていたこともある作品で、CD時代になってからもなかなかリリースされなくて、結構聴けなかったアルバムです。今ではどうなんだろ?それでも中古でしか見つからないのかもしれないな。オリジナルのレコードが云々って逸話もいろいろあったんだけど、たまたまネットで調べてたらe-Bayで見つけた時に今はオリジナルの青色盤でも5千円程度みたい。そうか…安くなったなぁ…。

Presence - Presence

 多分ほとんどの人が知らないであろうバンドというものはいくつも存在するし、ましてや英国のフォークを得意とするバンドなんてのは一般のロックファンの基準からしたらさらに知らない世界となるに違いない。まぁ、かと言って自分はどこから情報仕入れているのかっつうのも不思議なんだけどさ(笑)。入手して聴いてみてから初めてあちこち調べてみるという聴き方もあって、ギャンブルだけどなかなか楽しめることもある。そんな一例がこのバンド、プレゼンス。

 1976年リリースの唯一の作品。ややこしいのはさ、ネットの検索で「Presence」1976年と入れると山のようにZeppの「プレゼンス」が出てくるんだよ(笑)。なので情報調べること自体が大変でして、もうひとつ二つのキーワードが必要ですな。それには紅一点のボーカリストヴェロニカ・タワーズ嬢のお名前を入れてヒットさせるっていうことで解決、かな。もっとも裏ジャケに載ってるくらいでしか見たことないのでよく知らないのだが…。どっちかっつうとバンデル兄弟のバンドとして探した方が早いかも。

 なんだろなぁ、基本的にはもの凄くメロウなフォークバンドでもちろんヴェロニカ嬢の歌も良いんだけど、この人はどっちかっつうとロック系の歌を歌う方が似合っているので、純粋なフォークバンドってのでもない。しかも半分以上の曲にやたらとパーカッションの音が入っていることでわかるようにフォークを底辺としたごった煮ロックを展開したかったのかもしれない。1976年という年に純粋たるフォークバンドで英国から出てくるってのもなかなか考えにくいし、まぁ、ちと変わったフォークバンドみたいなところで出てきたのかもね。うん、だからパーカッションの不思議さを除けば割とメロウな純然たるフォークサウンド中心の音で美しいことに変わりはなく十二分に楽しめる。ちょっとシンプルすぎるキライはあるけど、ま、フォークらしい。

 トラッドの香りはあまりないです。トラッドとフォークって分けて聴いてるワケじゃないけど、もっと純然たるフォークのバンドとして認識してもらえれば良いのかな。このバンドってあんまり紹介されることもないし、英国フォークを語る本でも出てこないこともあるのでかなり珍しいバンドみたい。まぁ、1976年デビューつうのもあるだろうけどね。悪くはないよ。アマゾンでも探せないから入手方法不明だが(笑)。

 ただこの主要メンバーバンデル兄弟のIvorとKevanは二人で今でもユニット組んでいくつかの作品をリリースしているみたいだし、ヴェロニカのソロ作品でも共演してるようなので割と玄人向けのミュージシャンかもしれない。

Jethro Tull - Songs from the Wood

Songs from the Wood  「貴方の一番好きなバンドは?」と訊かれて即座に答えられる人とか都度答えが変わるけどって人とか色々いると思うが、このバンドが一番に出てくる人って尊敬に値すると思ってます。うん。ジェスロ・タルね。これほど英国らしく英国の深い所までを見せてくれるバンドもなかなかいないし、それはキンクスのレイ・デイヴィスのような英国らしいという表現ではなく、もっと深淵を覗いた後での表現というのかな、相当深い面での英国を伝承していると思う。音でも歌詞でもそもそもの存在感とか在り方とかってのも含めてすべて。もちろんユーモアも混ぜて、という意味で。だからこのバンドを徹底攻略するには相当の知識と英国文学やら文化、背景に繋がる物語に対する興味などなどを知らないと面白くない。というか知っていると更に楽しめる、っていうもんだよね。「A Passion Play」とかもモロそういうのだし。

 1977年10枚目の作品「Songs from the Wood」、パンク全盛期にリリースされた時代遅れとも云える、更に時代錯誤な田舎に戻ったトラッド風味の作風で完全に時代を無視したサウンド。しかしレーベルもしっかりとこういうのをリリースしてくれるあたりはジェスロ・タルというバンドの底力を知っていたからか。売れるというシーンからはかなりかけ離れた音世界を構築し、またしても新たなるジェスロ・タルの世界を見せてくれた傑作。

 レビューをあれこれ見てると、アコースティック寄りのトラッドに還ったという表記があったりするんだけど、これはもう思い切りプログレッシヴでポップな作品。もちろんエレキよりもアコースティックな音をたくさん使っているけど、トラッドというよりも英国的な音楽センスによるラインがそこかしこで出てくる…っつうか当たり前の姿で音楽しているイアン・アンダーソンって実に自然。だから転がり落ちるようにな演劇的な展開もあったり、ほのぼのする、正に森の中で妖精と戯れているかのような音もあったり、こういう深さはなかなか出てこないので、じっくりと楽しめるサウンド。間違ってもiPodあたりで何かしながら聴いていては絶対いけない。じっくりと腰を据えて煌びやかな音色に彩られた世界を楽しむべし。

 この頃イアン・アンダーソンは英国の田舎に引っ込んだ生活をしていたらしく、その近くにはスティーライ・スパンも住んでいたとのことで自然と交流をしていきトラッドやアコースティックに近づいたサウンドになったらしいけど、そうでなくたってしっかりとプログレッシヴなアコースティックだったのにね。ジャケットの素朴な風景と中味のインパクトたっぷりのロックサウンドはアンバランスながらも実にマッチしている不思議なアルバム。フォークじゃないよ、完全にロックのアルバムだけど、英国の深いアコースティック風味が出ている名盤。

PageTop このページのトップへ
Copyright (C) 2009 ロック好きの行き着く先は… All rights reserved.