Shirley Collins / The Albion Country Band / Ashley Hutchings / The Albion Dance Band



Shirley Collins And The Albion Country Band - No Roses

No Roses  アシュレー・ハッチングスの追求する純英国トラッド道に対する執着心はスティーライ・スパンでも途中で曲げられてしまったと感じたのか早々に離脱し、新たに自己の追求を行うことに徹している。この辺のミュージシャン魂によるこだわりは大したものだと痛感せざるを得ない。そしてシャーリー・コリンズという歌姫と出会い、その夢を全うすることになるのだが、その夢も単なる夢で終わらせずにそれまでに培った人間関係の全てを持ち出したと言っても過言ではないくらいに今やあり得ないくらい超豪華なメンツをゲスト陣として従え、トラッドフォークアルバムの傑作として語り継がれる作品を生み出した。

 1971年、当時…いや今でもその顔ぶれを見るだけで正にフォーク界の雄志が一同に介していることは一目瞭然だっただろう。ハッチングスが新たに命名したバンドはアルビオンカントリーバンド。それにシャーリーコリンズが参加したし、彼女自身は既にこれまでにソロ及びデュエット作品で名を成していたため、シャーリー・コリンズ&ジ・アルビオン・カントリー・バンドとして「No Roses」という名作を発表。メジャー所の人脈ではリチャード・トンプソン、ロル・コックスヒル、ニック・ジョーンズ、ドリー・コリンズ、ジョン・カークパリック、マディ・プライアー、サイモン・ニコルなどが挙げられるだろうか、簡単に参加しただけという人もいるし、思い切り演奏しまくってる人もいるので音を聴いてのお楽しみ的要素が強いのだが、純英国トラッドフォークなのでダンスチューンは姿を現さず、いわゆるまーダーソングに代表される英国産トラッドという落ち着いたサウンドとカラフルな音色に彩られた落ち着いた大人の音楽とも云える雰囲気がたっぷり。あちこちハッチングスの作品を聴いているとどこかで聴いたようなメロディやフレーズがそこかしこに出てくるのもユニーク。シャーリーの声はどこかしっとりとした中に抜けるようなトーンを持っていて、ピッタリと合っているんだけどその分アクが弱いという印象もあるが、好みの問題だろうね。

 それにしてもこのようなゲスト陣で構成され、しかも正に素晴らしき楽曲ばかりが羅列される作品はそうそうない、というかこの作品くらいでジャケットの醸し出す雰囲気と共に名盤の名を欲しいままにしているワケだな。重くもなく軽くもない、もちろんポップなわけではないけど優しい雰囲気で心に馴染んでくるこの作品の持つ音楽はやはり語り継がれるべきものだね。シャーリー・コリンズの作品も結構CD化されていて、あれこれと聴けるみたいなので今まで手に入らなかったレアなものも今なら簡単に手に入るってのも良い時代になったものだ。

Albion Country Band - Battle of the Field

Battle of the Field  伝承音楽の虜となったアシュレー・ハッチングスによる一大プロジェクトとも云えるバンドがアルビオン・カントリー・バンドだ、これはもうアイリッシュミュージックへの傾倒を諦めた一人の英国人による英国の音にこだわったバンドという信念が生み出したモノで、その意思をきちんと継承すべくエレクトリックトラッドの世界での重鎮達がみな手を貸して創り上げたアルバムがシャーリー・コリンズを筆頭とした作品「No Roses」だ。この名盤さ加減は既に有名な事実として認識されていて聴いている人もまぁ、いるんだろうなとは思うけれど、実はその時に使ったバンドの名がアルビオン・カントリー・バンド。今度はその名前での楽曲集をレコーディング。メンバーはリチャード・トンプソンやジョン・カークパトリックなどなどのやはり勝手知ったる重鎮達。

 1976年リリースだが実際には1973年にレコーディングしていた作品「Battle of the Field」。単純にレコーディング後にバンドが解体してしまって、アルバムリリースのタイミングを逸してしまったがためにリリースされなかったらしい。しかし1976年になってアシュレー・ハッチングスは再度アルビオン・バンドで復活したため、別レーベルからのリリースではあるが、この名盤と誉れ高い「Battle of the Field」が市場にお目見えすることになったらしい。その間にはダンスチューンをまとめた傑作「Morris on」ってのもあって、まぁ、大体が身内で固めて作った作品なんだけど、その分まとまった音が聞けて作品の質の高さを見せてくれるのもさすが。

 うん、アルビオン・カントリー・バンドっていう形態だけど、結局この人のこのバンドってプロジェクトに近いので都度都度アルバムリリースしたりしているので、バンド名とかにあまり深い意味は求めていない。でも、この作品は「No Roses」の次に位置するアルバムでもあるし、やはり時代の空気もパッケージしていることもあって今でも愛聴しているファンは多いはず。

 リチャード・トンプソン作の「Albion Sunrise」というシンボル曲が聴けるのもこの作品でだけ、っていうのも面白い。印象深い曲だから余計にそう思う。うん、音はエレクトリックトラッドそのもので伸び伸びと聴いていられるものだけどフォークらしくはなくって…、もっと土臭いっつうか、民族的ってトコ。重さや格調とかってのは全然ないからスティーライ・スパンとは大きく趣が異なっているね。

The Albion Dance Band - The Prospect Before Us

The Prospect Before Us  アシュレー・ハッチングスの探求道はフェアポート・コンヴェンション、スティーライ・スパン、そしてアルビオン・バンドという大きなバンドを残したことに十分に価値が反映されており、フェアポートにしろ、スティーライにしろ様々な形態にはなったもののしっかりと歴史に名を残すに相応しい活動を行っている。そしてもっともハッチングスが気楽に自由にやれていたバンドが実はアルビオン・バンドだったんだろう。シャーリー・コリンズとのパートナーシップは「No Roses」だけでなく以降もことある毎に続けられているし、バンドそのものはアルビオン・カントリー・バンドやアルビオン・ダンス・バンドからアルビオン・バンドと名前がいくつか変わっていくが、根本的にやりたいこと自体にそれほど変化はない…と言うかバンド名通りのサウンドを狙って作っているワケで、バンドと云うよりもプロジェクト的にアルバムをリリースしているという感じ。

 中でも1973年制作となった…が、当時バンドが存続していない状態だったので後にリリースされて話題となったのだが、アルビオン・カントリー・バンド名義による「Battle of The Field」は正に英国的フォークサウンドの象徴で、どれを取っても焦った曲はなくしっかりと英国的なリズムと湿っぽさとアコースティック楽器によって後世されているし、やっぱ所々のフィドルの音だったり、フッと沸いて出てくるフォークギターの単音なんてのが印象に残る。この頃から英国に伝わるモリス・ダンスというダンス曲の音源化を意識していたハッチングスは本作で「Morris Medley: Mouresque/London Pride/So Selfish Runs the Hare/Maid Of」というモリス・ダンス曲を披露しており、この後の活躍のネタ元となるのだが、明らかに英国的なサウンドで益々英国の深さがにじみ出てくるという作品。普通に聴けばどれもラジオで流れているような落ち着いたポップス、大人のポップスと言った感じに聞こえる曲調ばかりだが、その実ハマってみるとひとつひとつの音が凄く気になる作品(笑)。

 その後1976年にアルビオン・ダンス・バンド名義で発表された「The Prospect Before Us」はその名の通り、先のモリス・ダンスを十分に吸収した後の作品になっていて、もう踊らずにはいられないっていう曲がいっぱい詰め込まれているので素直にロック好きでノリの良いのがやっぱり聴きやすいってことならばこっちの方が良いんだろうな。こういうノリもあるんだよって感じなので、オススメしておきたいね。アルバムとしての評価では先の「Battle of The Field」の方が良いと言われるけど「The Prospect Before Us」の方が軽快にノレる。アコーディオンが良いんだろうなぁ、きっと。アコースティック楽器というよりも古楽器をいっぱい使っているのでその辺が自然なのかな…、表現が難しいんだが(笑)。ただ、興味深いサウンドってことに変わりはないね。

 翌年リリースされた「Rise Up Like the Sun」はまた全然違うイメージで、言うならばアルビオン・ロックミックス・バンドって感じかな。また違う角度で書かないといけないかな、っていう複合性の高いサウンド。ん〜、これはまた今度ちゃんと書こう。

Ashley Hutchings - Morris On

Morris on (Reis)  ちょっと堅い話かもしれないんだけど、英国伝承音楽の歴史を紐解いて行くとえらく深いところに行き着いてしまって、アシュリー・ハッチングスもそこに行き当たることになる。英国では伝統的にダンス音楽というものが継承されてきていたが、もちろん口頭による伝承音楽であったため文化としての形が残っておらず半ば消えかかっていたと言う。それをセシル・シャープという人が1899年に発掘、再発見して以来きちんとした形、例えば譜面などで残しておくべきだということに落ち着いたが、それを更にロックバンドが演奏するということでメジャーな音楽に仕立て上げたのがアシュレー・ハッチングスということになるんだろう。そいつを実践したのは1972年、はたまた英国フォーク仲間を多数集めて制作されたのが「Morris On」と云う作品。

 参加メンバーは恒例リチャード・トンプソン、デイヴ・マタックス、ジョン・カークパトリックなどなどに加え、もちろんハッチングスの奥方シャーリー・コリンズなどこれまた多数でこの英国伝承ダンス音楽を再演したものだ。もちろん古楽器が中心になり、コーラスワークもさすがのものだが、曲の骨格がもちろんトラッドフォークとは大きく異なるのでその延長で聴いてしまうとちょっと「ん?」って感じではあるんだけど、フィドルやアコーディオンっつうのがやっぱりノリの良い演出を施していて、元来ジグサウンドの好きな自分としては問題なし♪

 そんなウワサを聴いて最初にこのアルバムを聴いた時はいきなりフィドルの長いイントロからして驚いた…。その後に続くのはコーラスだけのアカペラで歌われる「Gleensleeves」だしさ(笑)。その次くらいからようやくそれらしいサウンドが聴けてくるので、ま、一枚でそれなりの物語展開らしく作っているんでしょう。小難しく解釈すると8分の6拍子調のジグに4拍子のリールが強烈に効いているみたいな感じが英国ダンス音楽の基本っつうことで以降どのバンドもこれに習ってダンス音楽を強調しているらしい。それにしてもこのアルバムジャケットのおちゃらけた格好のことと云ったらニューヨーク・ドールズも真っ青でしょ(笑)。ジョークの好きな英国人ならではの文化だね。

 またこの続編作品として1976年にはマーティン・カーシーやサイモン・ニコルやシャーリーなどで「Sons of Morris On」をリリースしているので、同じようなサウンドを楽しむことができるのもマニア的に嬉しいところかな。こういうのって別アーティストで探すのって結構大変だし。…と思ったら2002年には更に唐突に30周年記念てなことかどうか知らないが「Grandson of Morris On」というアルバムをリリース(笑)。ここまで来るとさすがだ、と思ってしまう。ハッチングスと言う人はピート・タウンジェンド以上にこだわりを見せる歴史の追随者なのだろう。ここまではさすがに聴いていないので実際のサウンドがどんな感じなのか知らないが、多分、そのままなんだろうなぁと(笑)。

 この辺まで漁っておくとさすがに英国ロックバンドがある程度変わったことやってても大体分かってくるんだよね。もっとも正当派のポップス路線ってのもあるので、ま、その辺はビートルズ当たりから入ってれば大丈夫だろうけど、こういうのはね、ビートルズからは漁れない。でも彼等はやってるんだよな…。で、Zepは面白い、実に面白い。こういうトコロまで行けるってのが良い。で、それを受け止めるだけのキャパが英国ロックにはあるんだなぁ。これが凄い。う〜ん、まじまじと感動(笑)。

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